第113章

悠はとっさに手を伸ばし、彼女をぐいと胸元へ抱き寄せた。その腕はきつく回されている。

「葵、あいつの戯言を真に受けるな。和也がそう簡単に死ぬはずない」

耳元で響く悠の声には、微かな焦りが滲んでいた。

葵は彼を押し返し、背筋を伸ばして立ち上がると、掠れた声で言った。

「私は平気」

甲板に立つ傘木大策を睨みつけるその瞳の奥に、ぞっとするような凄絶な殺気が閃く。

「傘木大策、雅宣はもう刑務所よ。録音テープを盾にしても、あいつの命は買い戻せないわ」

葵が一歩前へ踏み出すと、革靴が雪を踏みしめてギュッと鳴った。

「黙れ! 藤原グループの株式譲渡契約書をこっちへ投げろ! さもないと今すぐこ...

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